大槻タイムズをご愛読いただき有難うございます。大槻タイムズは、労働・人事・労務に関連する最新の主要情報をまとめて掲載しています。組織の法令順守には新しい、かつ正確な情報の取得がもっとも重要になります。この大槻タイムズが貴社の発展の一助になれば幸いです。
今月のTOPIC S
1.賃金の「デジタル払い」解禁令和5年4月1日より施行予定
2.令和5年4月1日より出産育児一時金額引き上げ予定
3.高齢者保険料負担の見直し検討
4.iDeCo加入年齢の引き上げ検討開始
5.コロナ標準報酬月額特例改定を12月急減月までで終了
6.化学物質による労働災害防止のための新たな規制について労働安全衛生規則等の一部を改正
1. 賃金の「デジタル払い」解禁令和5年4月1日より施行予定
賃金の「デジタル払い」について令和4年11月28日に労基法施行規則の一部を改正省令が公布され、令和5年4月1日より施行される。現行、賃金の支払方法については、通貨の他、労働者の同意を得た場合には、銀行その他の金融機関の預金または貯金の口座への振込み等によることができるとされている。キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズも一定程度見られることも踏まえ、今般、使用者が、労働者の同意を得た場合に、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払い(いわゆる賃金のデジタル払い)ができることとした。厚労省HPにてQA、同意書様式について公開している。
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001016402.pdf
(クリックすると外部サイトに移動します)
2. 令和5年4月1日より出産育児一時金額引き上げ予定
令和4年12月15日に社会保障審議会医療保険部会にて、出産育児一時金の引き上げについて審議された。
出産育児一時金の額については、前回の引き上げ時は、「公的病院」の平均出産費用を勘案し、設定された。出産費用は年々上昇する中で、平均的な標準費用を全て賄えるようにする観点から、「全施設」の平均出産費用を勘案するとともに、近年の伸びを勘案し、直近の出産費用も賄える額に設定する。以上より、48.0万円(令和4年度の全施設平均出産費用の推計額)+1.2万円(産科医療補償制度の掛金)=49.2万円となるため、出産育児一時金の額は、令和5年4月から、全国一律で、50万円とする。
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001024271.pdf
(クリックすると外部サイトに移動します)
3. 高齢者保険料負担の見直し検討
令和4年12月15日に社会保障審議会医療保険部会にて、高齢者保険料負担について審議された。
現行の高齢者負担率(高齢者が保険料で賄う割合)の設定方法は、現役世代の減少のみに着目しており、制度導入以降、現役世代の負担(後期高齢者医療支援金)が大きく増加し(制度創設時と比べ、現役は1.7倍、高齢者は1.2倍の水準)、令和7年までに団塊の世代が後期高齢者になる中で、当面その傾向が続く一方、長期的には、高齢者人口の減少局面においても、高齢者負担率が上昇し続けてしまう構造となっている。
高齢者世代・現役世代それぞれの人口動態に対処できる持続可能な仕組みとするとともに、当面の現役世代の負担上昇を抑制するため、介護保険を参考に、後期高齢者1人あたり保険料と現役世代1人あたり後期高齢者支援金の伸び率が同じになるよう、高齢者負担率の設定方法を見直しする。
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001024271.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001022176.pdf
(クリックすると外部サイトに移動します)
4. .iDeCo加入年齢の引き上げ検討開始
令和4年12月7日社会保障審議会企業年金・個人年金部会にて、iDeCo加入年齢の引き上げについて審議された。
iDeCoは平成13年の制度創設以来、加入対象範囲の拡大等の累次の制度改革を行ってきた。平成29年1月の制度改正では、加入対象を拡大し、国民年金第1号被保険者および企業年金のない第2号被保険者に限定されていたものから、全ての被保険者種別の国民年金被保険者を加入可能とした。令和4年5月からは加入可能年齢を拡大し、60歳未満の国民年金被保険者に限定されてきたものから、原則65歳未満の国民年金被保険者であれば加入可能とした。このような制度拡充の中で、iDeCoの加入者は平成29年3月末時点の43万人から239万人と拡大してきたものの、公的年金加入者(6,725万人)と比較すれば、なお限定的であり、更に利用を進める余地が大きい。制度の認知度の向上や手続きの煩雑さの解消を進め、iDeCoをより容易にかつ幅広く活用できるようにする。
さらに、令和2年に高年齢者雇用安定法の改正法が成立し、令和3年4月より65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置を講ずることを企業の努力義務にする等、70歳までの就業を支援することとなった。そこで、高齢者の就業機会確保の努力義務が70歳まで伸びていること、働き方やライフスタイルが多様化していることに留意し、老後に向けた家計の資産形成の更なる環境整備が求められていることから、iDeCo制度の改革を実施する。
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/content/10600000/001020914.pdf
(クリックすると外部サイトに移動します)
5. コロナ標準報酬月額特例改定を12月急減月までで終了
令和2年4月から、新型コロナウイルス感染症の影響による休業により著しく報酬が下がった方について、事業主からの届出により、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、翌月から改定を可能とする特例措置を実施している。
今般、令和4年8月から令和4年12月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した方や、令和3年6月から令和4年5月までの間に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けている方についても、特例措置が講じられた。これら特例措置は、令和4年12月までを急減月とする改定をもち終了し、令和5年1月以降を急減月とする特例措置はない。
令和4年8月から令和4年12月までの間に新たに休業により著しく報酬が下がった方の特例
次の①から③の全てに該当する方が対象となる。
①新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和4年8月から令和4年12月までの間に、著しく報酬が下がった月が生じた方
②著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、すでに設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方(固定的賃金の変動がない場合も対象となる)
③本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している
(出典 日本年金機構)
【日本年金機構HP】
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0708.html
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001026188.pdf
(クリックすると外部サイトに移動します)
6. 化学物質による労働災害防止のための新たな規制について労働安全衛生規則等の一部を改正
厚生労働省は、化学物質による労働災害を防止するため、労働安全衛生規則等の一部を改正した。
化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く。)の原因となった化学物質の多くは、化学物質関係の特別規則の規制の対象外となっている。本改正は、これら規制の対象外であった有害な化学物質を主な対象として、国によるばく露の上限となる基準の策定、危険性・有害性情報の伝達の整備拡充等を前提として、事業者が、リスクアセスメントの結果に基づき、ばく露防止のための措置を適切に実施する制度を導入する。
本改正の主なポイント
1.労働安全衛生規則関係
(1)リスクアセスメントが義務付けられている化学物質(以下「リスクアセスメント対象物」と言う。)の製造、取扱いまたは譲渡提供を行う事業場ごとに、化学物質管理者を選任し、化学物質の管理にかかわる技術的事項を担当させる等の事業場における化学物質に関する管理体制の強化
(2)化学物質のSDS(安全データシート)等による情報伝達について、通知事項である「人体に及ぼす作用」の内容の定期的な確認・見直しや、通知事項の拡充等による化学物質の危険性・有害性に関する情報の伝達の強化
(3)事業者が自ら選択して講ずるばく露措置により、労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を最小限度にすること(加えて、一部物質については厚生労働大臣が定める濃度基準以下とすること)や、皮膚または眼に障害を与える化学物質を取扱う際に労働者に適切な保護具を使用させること等の化学物質の自律的な管理体制の整備
(4)衛生委員会において化学物質の自律的な管理の実施状況の調査審議を行うことを義務付ける等の化学物質の管理状況に関する労使等のモニタリングの強化
(5)雇入れ時等の教育について、特定の業種で一部免除が認められていた教育項目について、全業種での実施を義務とする(教育の対象業種の拡大/教育の拡充)を全業種に拡大
2.有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、粉じん障害防止規則関係
(1)化学物質管理の水準が一定以上の事業場に対する個別規制の適用除外
(2)作業環境測定結果が第三管理区分の事業場に対する作業環境の改善措置の強化
(3)作業環境管理やばく露防止対策等が適切に実施されている場合における有機溶剤、鉛、四アルキル鉛、特定化学物質(特別管理物質等を除く。)に関する特殊健康診断の実施頻度の緩和
3.施行日
公布日(一部令和5年4月1日または令和6年4月1日施行)
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000987253.pdf
(クリックすると外部サイトに移動します)
編集後記
皆様あけましておめでとうございます。年末年始のお休みゆっくりできましたでしょうか。一月往ぬる二月逃げる三月去ると言われるように、またあわただしい日常が戻ってまいりました。行事ごとや準備に追われ、あっと言う間に年度末、そして今年も法改正が目白押しでございます。大槻事務所では働きやすい会社から働きやすい社会への企業理念のもとに今年も最新の情報をお届けしてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【鈴木 麻耶】
【発行元・お問合せ】
社会保険労務士法人大槻経営労務管理事務所
〒104-0061
東京都中央区銀座1-16-7 銀座大栄ビル4F
Tel.03-5524-1701/Fax.03-5524-1708
オンラインによる相談はこちらから申込みください
(クリックするとオンライン労務相談にアクセスします)