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今月のTOPIC S
1. 国民年金法等の一部を改正する等の法律が成立
2. 労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正する法律について
3. 令和7 年の労働施策総合推進法等の一部改正について
4. 戸籍法改正関係氏名の振り仮名を変更する場合の年金に関する注意事項を日本年金機構が公表
1. 民年金法等の一部を改正する等の法律が成立
令和 7 年 5 月 16 日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」が第 217 回通常国会に提出され、衆議院で修正のうえ、6 月 13 日に成立した。この法律は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るためのものである。
Ⅰ.働き方に中立的で、ライフスタイルの多様化等を踏まえた制度を構築するとともに、高齢期における生活の安定および所得再分配機能の強化を図るための公的年金制度の見直し
- 被用者保険の適用拡大等
① 短時間労働者の適用要件のうち、賃金要件を撤廃するとともに、企業規模要件を令和 9 年 10 月 1 日から令和 17 年 10 月 1 日までの間に段階的に撤廃する。
② 常時 5 人以上を使用する個人事業所の非適用業種を解消し、被用者保険の適用事業所とする。なお、既存事業所は、経過措置として当分の間適用しない。
③ 適用拡大に伴い、保険料負担割合を変更することで労働者の保険料負担を軽減できることとし、労使折半を超えて事業主が負担した保険料を制度的に支援する。
⒉在職老齢年金制度の見直し
一定の収入のある厚生年金受給権者が対象の在職老齢年金制度について、支給停止となる収入基準額を50 万円(令和 6 年度価格)から 62 万円に引き上げる。
⒊遺族年金の見直し
① 遺族厚生年金の男女差解消のため、18 歳未満の子のない 20~50 代の配偶者を原則 5 年の有期給付の対象とし、60 歳未満の男性を新たに支給対象とする。これに伴う配慮措置等として、5 年経過後の給付の継続、死亡分割制度および有期給付加算の新設、収入要件の廃止、中高齢寡婦加算の段階的見直しを行う。
② 子に支給する遺族基礎年金について、遺族基礎年金の受給権を有さない父母と生計を同じくすることによる支給停止にかかわる規定を見直す。
⒋厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的引上げ
標準報酬月額の上限について、負担能力に応じた負担を求め、将来の給付を充実する観点から、上限額を 65 万円から 75 万円に段階的に引き上げる(※)とともに、最高等級の者が被保険者全体に占める割合に基づき改定できるルールを導入する。 ※ 68 万円→71 万円→75 万円に段階的に引き上げる。
⒌将来の基礎年金の給付水準の底上げ
①政府は、今後の社会経済情勢の変化を見極め、次期財政検証において基礎年金と厚生年金の調整期間の見通しに著しい差異があり、公的年金制度の所得再分配機能の低下により基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、基礎年金または厚生年金の受給権者の将来における基礎年金の給付水準の向上を図るため、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドによる調整を同時に終了させるために必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、給付と負担の均衡がとれた持続可能な公的年金制度の確立について検討を行うものとする。
② ①の措置を講ずる場合において、基礎年金の額および厚生年金の額の合計額が、当該措置を講じなかった場合に支給されることとなる基礎年金の額および厚生年金の額の合計額を下回るときは、その影響を緩和するために必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
Ⅱ.私的年金制度の見直し
① 個人型確定拠出年金の加入可能年齢の上限を 70 歳未満に引き上げる。
② 企業年金の運用の見える化(情報開示)として厚生労働省が情報を集約し公表することとする。
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001496971.pdf
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2.労働安全衛生法および作業環境測定法の一部を改正する法律に ついて
令和7 年5 月8 日、衆議院本会議にて、労働安全衛生法および作業環境測定法の一部改正が可決、成立した。少子高齢化が進展し、生産年齢人口の減少が見込まれる中、多様な人材が安全に、かつ、安心して働き続けられる職場環境を整備するため、以下の5 点が改正となる。
①個人事業主等に対する安全衛生対策の推進
②職場のメンタルヘルス対策の推進
③化学物質による健康障害防止対策等の推進
④機械等による労働災害の防止の促進等
⑤高齢者の労働災害防止の推進
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省 HP】
https://www.mhlw.go.jp/content/001449334.pdf
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3.令和7 年の労働施策総合推進法等の一部改正について
令和 7 年 6 月 11 日、いわゆるカスタマーハラスメント、求職者等へのセクシュアルハラスメント等のハラスメントのない職場づくりや、女性の職業生活における活躍に関する取組の推進等を図るため、労働施策総合推進法等が改正された。公布の日から起算して 1 年 6 月以内で政令で定める日に施行予定。(一部の規定は令和 8 年 4月 1 日に施行予定。)
法改正とともに、必要な省令や指針(厚生労働大臣告示)の改正・通知の発出についても、公布され次第順次公表予定。
- 労働施策の総合的な推進ならびに労働者の雇用の安定および職業生活の充実等に関する法律の一部改正
(改正法第 1 条および第 2 条関係)
①職場における労働者の就業環境を害する言動に関する規範意識を醸成するための国による啓発活動
②治療と就業の両立支援対策
③職場における顧客等の言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等
④職場における顧客等の言動に起因する問題に関する国、事業主、労働者および顧客等の責務
⑤その他
⒉雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保等に関する法律の一部 改正(改正法第 3 条関係)
①求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等
②求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主および労働者の責務
③男女雇用機会均等推進者
④その他
⒊女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の一部改正(改正法第 4 条関係)
①基本原則
②基本方針
③基準に適合する認定一般事業主の認定の基準
④特定事業主行動計画の変更手続きの見直し
⑤女性の職業選択に資する情報の公表の義務の適用拡大等
⑥期限の延長
⑦その他
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省 HP】
https://www.mhlw.go.jp/content/001502748.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/001502758.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/001502757.pdf
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4.戸籍法改正関係氏名の振り仮名を変更する場合の年金に関する注意事項を日本年金機構が公表
戸籍法(昭和22 年法律第224 号)および住民基本台帳法(昭和42 年法律第81 号)の改正により、令和7 年5 月26 日以降、本籍地の市区町村長から、順次、戸籍・住民票に記載される予定の「氏名の振り仮名」が通知されている。これにともない「氏名の振り仮名」を変更・訂正する届出を行った場合、次の通り年金関係の手続きが必要になる可能性があるため、注意が必要となることが日本年金機構より公表された。
①年金受給の方で、年金の受取先金融機関の口座名義の変更が必要な方に対しては、日本年金機構から「氏名変更のお知らせ」(口座名義変更のご案内)が届いた場合は、年金の受取先金融機関の口座名義(フリガナ)の変更手続きが必要になる。
②国民年金第1 号被保険者の方で、国民年金保険料を口座振替によりお支払いいただいている方は、「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書兼還付金振込方法(変更)申出書」の提出が必要となる。また、国民年金保険料を納付書により納付していただいている方については、未納期間がある場合、変更後の氏名で国民年金保険料の納付書が再発行される場合があるため、重複納付とならないよう注意する必要がある。なお、「氏名の振り仮名」変更前、変更後のいずれの納付書でも納付可能である。
③健康保険被保険者(協会けんぽ)の方で、協会けんぽより資格確認書が発行されている場合は、変更後の「氏名の振り仮名」で資格確認書が発行される。
(出典 厚生労働省)
【厚生労働省 HP】
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/kosekinenkin.html#cmskyotsu
(クリックすると外部サイトに移動します)
編集後記
梅雨明けが待ち遠しいこの頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私ども、社会保険労務士事務所にとって、7 月は社会保険の賞与支払届・算定基礎届・労働保険の年度更新の作成、届出と、業務の繁忙期になります。さて、大槻タイムズは、最新の法改正情報を発信することにより、いち早く皆様に法改正対応や人事戦略等に集中していただく資料として活用していただきたいと考えております。皆様にとってより一層、有益な情報となるためにご意見、ご要望等ございましたら、是非お聞かせいただきたく、担当者までお申し付けください。何卒よろしくお願いいたします。
【山本倫央】
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